2023年8月22日火曜日

処暑:怒りの葡萄

明日8月23日は処暑,少しは涼しくなった気もするが秋はまだまだ先の様子。そんな中,店先に並ぶ秋の果物から,葡萄を木版画にしてみた。篆刻は「処暑」,表題はスタインベック『怒りの葡萄』(The Grapes of Wrath)から。漢字の葡萄は複雑で彫りにくいからひらがなにした。怒りを表すため葡萄は,まるではなく角をつけた。実は,この角のアイデアは幼稚園に通う孫が作った折り紙細工から借用したもの。もちろん彼女は怒りを表そうとしたわけではないのだが。

怒りの葡萄

先週は半年に一度の心臓の定期点検,朝早くから病院へ向かった。海の近くにあるこの大きな病院には20年近く通っている。僕は,今話題の「健康保険証と一体化されたマイナンバーカード」を持って行ったのだが,なんとこんなに大きな病院(30を超える診療科と768床の病床)に,マイナンバーカードの読み取り機がたった1台しか無いのだ(2023年8月18日現在)。それもその1台は保険証確認カウンターに,正面からは見えないように小さな看板で隠されている。

紙の保険証ならば,いつものように検査室の受付で簡単に保険証の確認が出来,直ちに検査を受けることができるが,マイナンバーカードの場合は,病院内にたった一箇所の確認カウンターまで戻り,受付順にこれまた,たった1台の読み取り機で確認を行った後,再び検査室の受付に戻り,あらためて検査の受付をすることになる。つまり検査の順番は後回しだ。マイナンバーカードは紙の健康保険証に比べて,すこぶる不利な取り扱いを受けることになるわけである。

国をあげてマイナンバーカードの普及を進めているように思っていたが,公共機関の現場ではそんなことには全く無関心のようだ。それどころか,流れに逆行し,マイナンバーカードの利用を抑制する方策がとられているようにさえ感じる。医療に関しては僕はこの病院に絶大なる信頼を置いている。事実,50歳で心臓,腎臓,泌尿器と次々と患った僕が,定年退職時まで,細々ながらも研究と教育を続けることができたのも,この病院の高い医療水準と,優れた先生方のおかげだと心から感謝している。

しかし,どれほど医療水準が高く,どれだけ優れた先生方がおられても,事務方については,やはり「お役所の現実」がある。こんなに大きな,地域を代表する公共病院にマイナンバーカードの読み取り機がたった1台しかないという現実は,僕の理解のはるか彼方にあり,不便さへの「怒り」よりも,ただただ「呆れる」ばかりだった。このことは,仮に「東京駅にICカードが使える自動改札口が一箇所しかなければ,ICカードが普及するか?」と考えればよくわかる。

それでもその日は楽しいこともあった。病院の近くに住む木版画教室の友人のSさんから「家庭菜園でカボチャが獲れたから近くに来るなら取りにおいで」と親切な連絡があり,立派なカボチャをいただいた。まだ食べてはいないが,昨年と同じく美味しいに違いない。

立派なカボチャ



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