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2025年4月28日月曜日

バースデーカード

子どもたちのお誕生日会のために,木版画でバースデー・カードを作成した。

バースデーケーキという子供らしい図案のカードだが,お誕生日の嬉しさや楽しさを表すために,ちょっとシャガール風にケーキの周りを舞う子どもたちを描いてみた。

バースデーカード:シャガール風


2025年4月15日火曜日

Also Sprach Xaver (フランシスコ・ザビエルはかく語りき)

「赤いコートを着た女」の構図がとても気に入って,同じような大きさの,同じような構図の木版画を作りたくなった。ふと思い浮かんだのが大分駅にあるフランシスコザビエル像。明示的に手を描かなかった「赤いコートを着た女」に対して,フランシスコザビエルは大きく手を広げている。それを特徴として木版画を作った。ただし実際の銅像の頭は傾いてはいない。

大分駅のザビエル像

自作のザビエル

例によって,版画は5センチ×7センチぐらいのとても小さいもの。写真の背景のLPレコードはカール・リヒター指揮/ミュンヘンバッハ管弦楽団 :ヘンデル オラトリオ「メサイヤ」-ドイツ語版-(全曲)。

両手を広げたザビエルの姿は,僕にはどうしても次のように見えてしまう。ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき(Also Sprach Zarathustra)』風に言えば,
Also Sprach Xaver:

Fängt es an zu regnen?

それとも,何かを尋ねられて両手を広げ「私にはわからない」と答えているようにも見える。この発想,中学高校とカトリック系の学校に通ったにもかかわらず不謹慎極まりない。

 

2025年3月23日日曜日

小さな額:コーヒーポット

再び小さな正方形の額。今回はコーヒーポット。昔使っていた,木の取っ手のあるコーヒーポットの版画を入れた。このポットでお湯を沸かし,下に散らばっている豆を挽いてドリッパーでカップに濾過して飲むのが正しいが,そのプロセスを適当に省略して,そう言う日常を単純化して描いたわけだ。何せ5センチ四方足らずの小さな絵だから省略は必須。「赤ワイン」,「赤いコートの女」と鮮やかな色合いが続いたから今回はおとなし目の色合いにした。


コーヒーポットとコーヒーカップ




2025年3月6日木曜日

赤いコートの女

2018年10月,定年退職の半年前,初めて壬生狂言なるものを観た。初めはちょっとした時間つぶしのつもりだった。ちょうどその日の夜,京都で,オランダから来た旧友と共同研究の打ち合わせをすることになっていたからだ。そのころ旧友はオランダの古い国立大学の学長(Rector)をしていたため,昼間は表敬訪問や大学間協定の会議など研究以外の公務で忙しい。夜しか研究の打ち合わせの時間が取れなかったのだ。忙しい中,彼はいつも時間を作って共同研究を続けてくれた。

壬生狂言は午後1時半ごろ始まり日が沈む頃まで続く。先に言った様に少しだけ観て街中へ行き,お気に入りの寺町通りなどをぶらぶらしようと考えていた。しかし意外に面白くて引き込まれ,最後まで存分に楽しむことができた。

壬生寺

ところで席はすべて自由席なんだが,ちょうど僕の斜め左前の席に赤いコートを着た一人の若い女性が座っていた。満席だったが,何故かその人は誰かを待っている様で,なかなか狂言に集中できない様子だった。とても魅惑的な香水の香りが微かにしていたこともあり,その様子がとても気になった。最後の演目が始まる直前,辺りが暗くなるころ,初老の男性が現れ,中座した観客がいたため空いていたその女性の隣に座った。
「ごめん,ごめん。なかなか仕事の区切りがつかなくて」
「先生,お忙しいのだったら言ってくださったらよかったですのに」
二人ともとても落ち着いたやさしい声で話していた。僕とほぼ同年輩の男性は,きっと僕と同じ職業なんだろう。素敵な香水の香りとともに印象に残っているこの情景を「赤いコートの女」と題し,ちょっとモディリアーニ風の木版画にした。サイズは「赤ワイン」と同じ小さなもの。バックはマイルスデービスのスケッチオブスペイン。情熱の国スペインだが,他意は無い。



赤いコートの女:モディリアーニ風

赤いコートの女:モディリアーニ風




2025年3月4日火曜日

小さな額:茶碗と茶筌

街で見つけた小さな額に,小さな茶碗の木版画を入れた。額の窓は5センチ足らず四方の本当に小さなもの。この図柄は新作ではない。一昨年に作成した二十四節気,夏至で,和菓子「水無月」に添えた茶碗の茶筌の図柄と同じ。ただ小さな額用に全体を一回り小さくして彫り直し,茶碗の色もグレーにした。小さな額の版画は単純なものが最適。前回の赤ワインに続いてこれも飲み物。次は飲み物とは違うものにしてみよう。

茶碗と茶筌

 

2024年7月18日木曜日

プルシアン・ブルー(Prussian Blue) or ペルシアン・ブルー(Persian Blue)?

7月14日の日曜日,お天気は良くなかったが,思い切って大阪まで「広重 — 摺の極」を観に行ってきた。大混雑と大行列を予想していたが,整理券方式で入場時間が来場者に割り当てられるため11時過ぎ会場に到着後間もなく11時30分にすんなり入場することができた。

作品展のポスター

大混雑ではないものの会場内は結構な人。「鑑賞の順は特に設けていないから自由に行き来してください」とのアナウンス。つまり,混雑しているとはいえ自由に進んだり戻ったりできるほどのスペースの余裕はある。僕にとっては趣味や道楽の木版画だが,流石にプロの作品は絵も彫りも摺も次元が違う。僕の道楽の木版画とは別物と考えた方が正しい。それでもやはり,気分が高揚して一つ一つの展示作品を食い入るように鑑賞してきた。

僕の木版画と比べるのは烏滸がましいのだが,4月に行った「福田平八郎展」(こちら👉の時と同様,自分がやっていることもまんざらおかしなことではないのだと妙な自信がわいた。

  • 見たものをそのまま上手に絵にすることができなくても,心でそのように見えたことを,頭に浮かんだイメージをどんなに単純であっても,自分なりに描けばいいんだ。無理矢理,写実に近づける努力をしなくても(もちろん僕にはそんな技量はまったくないが),気持ちを伝えることの方が重要なんだ。とくに煙の描き方に思わず「ガッテン!」。さっそく応用してかねてかふぁ悩んで停滞していた小さな木版画を一つ完成させた。
  • 以前,多色刷りがズレて白い隙間ができたり,細い線や細部が欠けてしまったりすることを嘆いていた。目を凝らして見ると,広重の作品にも白い隙間や細い線が欠けている所がある。かつて,ズレやカケを気にしていると,木版画の手解きを受けた二人の先生(琵琶湖のK先生,北野のH先生。どちらも女性)が「だってそれが版画なんだから」とニッコリ笑って言われたことを思い出した。これからはそんなことは気にせず楽しもう。
  • 浮世絵は,絵師,彫り師,摺師の共同作業だが,僕はその三者をすべて一人でやっているわけだ。400メートル走のタイムは400メートルリレーのタイムに遠く及ばないのは当たり前。これで飯を食っているわけではないので気楽にやろう。しかし,広重にこういう絵を持ち込まれた「彫り師」は,「これを彫るんですか?もう勘弁してくださいよ」と言いたくなっただろうな。それほど緻密な絵だった。そういう意味では,絵師,摺師だけでなく彫り師にも光を当ててほしい。「摺の極」だけでなく「彫の極」も十分あると思う。
というわけで,一つ一つの作品を丁寧に鑑賞していると,あっというまに時間が経ち,会場の出口で時間を見るとなんと2時間前になっている。2時間以上食い入るように見ていたわけだ。会場内は飲食厳禁,さすがの僕も水分不足で熱中症直前。広重展ならず疲労重展。

ただ一つ気になったのはこのブログの表題にもあるように広重のブルーのこと。会場で作品はいくつかの章に分類されて展示されており,その章の最初に各章の説明の大きな看板が掲げられている。看板はあまり気にせず作品に集中していたが,後ろから「広重の青は,ペルシャンブルー,ペルシャの青なんやねー」という女性の声が。思わず「違う,違う,ペルシャではなく,プルシャンブルーですよ」と言いかけて,その看板を見ると,なんとペルシャンブルーと書かれている。丁寧に英語でもPersian Blueと書かれているのだ。

看板では,ペルシャンブルーという記述の前には,この藍色を「ベロ藍」とも書かれている。つまりベルリンから来た藍色で,ペルシャから来たものではない。そもそも公式にはペルシャンブルーなる色の名前はない。それでも美術に素人の僕には,その場で「違う,違う,ペルシャではなく,プルシャンブルーですよ」と言う自信はなかった。きちんとした学芸員さんがいる美術館でこんなことを間違うわけはないから,おそらくこれまで僕が理解していたことが誤りだったんだろうと。

帰宅後も違和感は消えず,いろいろ調べてみたが,浮世絵の藍色がペルシャンブルーという記述はまったく見つからなかった。どれもプルシアンブルーと書かれている。とても気になるので,問い合わせようとしたが,美術館には電話以外に問い合わせ先がみつからない。たまたま展覧会のサイトに,ハルカス大学連携美術講座「広重展のみどころ紹介 初摺りの魅力」との記述があったので,ハルカス大学にある問い合わせフォームで質問してみた。3日後展覧会担当者からの伝言という形でメールが転送されてきた。

実はハルカス大学はハルカス美術館とは全然別物らしく,わざわざ美術館の担当者に聞いてくださったとのこと。ハルカス大学の方の丁寧な対応に感激。しかし美術館の担当者の回答では僕の違和感は消えなかった。転送された回答は

*********************************************************************
今は「プルシャンブルー」と表記するのが一般的
過去に、「ペルシャンブルー」と表記されていた時期もあり、その名残です。
原文「Prussian blue」の日本語カタカナ表記ですので、表記ゆれがあった。
*********************************************************************

という簡単なもの。どうやら特に問題はないようだ。しかし,素人の一般人が多く観に来る展覧会で,今は一般的な「プルシャンブルー」を用いずに,過去に表記されていたこともあるという特殊な「ペルシャンブルー」を用いたのは何故なんだろう?「ペルシャンブルー」と表記されていたのは過去のいつ頃のことなんだろう。それに原文「Prussian blue」の日本語カタカナ表記とのことだが,そもそも会場の看板には英語でもPersian blueと書かれていた。後ろの女性の声に思わず看板で確認したから僕の記憶に間違いはないだろう。

いずれにせよ,この回答では,いったい何が正しくて,何が正しくないのかがまったくわからない。転送された回答では,ペルシャンブルー(Persian blue)であってもプルシアンブルー(Prussian blue)であってもどちらでも構わないと言うことのようだが。他の細かい事ならともかく,藍色(ベロ藍)はいわば今回の展覧会の核心部分だから,気になって仕方がない。誰か何が正しいのか教えて下さ〜い。






2023年12月31日日曜日

静かな大晦日

息子家族が帰ってこないため,何年かぶりに静かな大晦日を過ごしている。大掃除もそこそこに,おせちの準備も早々と終わった。うとうとしながらストーブのそばで本を読んでいると,この静かな時間の流れを木版画で表してみたくなった。いつもながらの単純な絵柄で,大晦日のお昼すぎからバタバタと3時間ほどで完成した。なんということのない昔風の石油ストーブ一台だけの絵柄だが,聞こえてくるのはストーブの上でシュンシュンシュンシュンと微かな音を立てているヤカンの音だけの,静かなのんびりした雰囲気が伝わるだろうか?

アラジンと魔法のストーブ

2023年はとても充実した年だった。ただとても忙しく,ゆっくり本を読む時間をとることができなかった。来年はもう少しゆったりした時間を楽しみたい。2024年もよろしくお願いします。



2023年11月22日水曜日

小雪:柿の彼方に

本日は小雪。この辺りはまだ雪は降っていないが,北日本では先週大雪だったとのこと。立冬から二週間,すっかり冬になって我が家ではすでにストーブを出している。燃焼の匂いが嫌で,ずっと床暖房とオイルヒーターで暖を取っていたが,最近のガス代,電気代の高騰や,災害時に備えエネルギー源を分散するために,古典的な(Aladdin)の石油ストーブを使い出したわけだ。ストーブの上で沸かしたお湯は湯たんぽに使え,エネルギー効率はすこぶる良い。

日に日に寒さが増すのと並行して,庭先の物干し竿に吊るした干し柿の色も日に日に濃くなっていく。吊るし柿越しに青い空と遠景の山を眺めていると,ふと「オズの魔法使い」でジュディー・ガーランドが歌う「虹の彼方に(over the rainbow)」を思い出した。そんなことを思いながら,吊るし柿と遠景の山を木版画にした。実際には柿の数はもっと少ないし,住宅に遮られて山も全体が見えるわけではない。いつもの誇大妄想の癖が出た虚構の世界だ。

吊るし柿

 題名は曲名をもじって「柿の彼方に(over the persimmons)」。篆刻は小雪。午後ちょっぴり素敵な出来事があった。

2023年11月21日火曜日

クリスマスカードの試作品

今年もクリスマスカードを送るシーズンが近づいた。友人たちのほとんどは,メールでデジタル画像を送ってくるのだが,そんな時こそと,僕は手作りの木版画クリスマスカードを毎年送っている。年賀状は定年を機に既にやめてしまったが,クリスマスカードは送り先が10名ほどの外国人で少なく,手作りで丁寧なカードを送っている。ただ続けているとだんだんアイデアが枯渇してくるのも事実だ。今年はちょい手抜きをして,三角形をモチーフに簡単なクリスマスツリーのカードを作成した。

青いメリークリスマス

赤いメリークリスマス

 簡単とは言え,今年一年を象徴する題材が隠し味。いまだメリークリスマスの文字色をどうしようか迷っている。

2023年6月25日日曜日

旧居留地界隈

今日は,橋梁のT君,地質のT君と3人で久しぶりのランチ。三宮の山手にある中華料理店。いつもどおり楽しいおしゃべりの時間を過ごすことができたが,お店のサービスでちょっとびっくりするような興醒めなことがありガッカリ。お店の名前が特定されてしまうおそれがあるため,今回は食事の写真はアップロードしないことにしよう。

それはさておき,帰りにおしゃれなテラスでコーヒーやケーキをたべておしゃべりの続き。ぼんくら社会科学研究者の僕と違って,二人ともきっちりした自然科学系の専門家。構造や地層について,いろいろと勉強になるお話を聞くことができた。

テラスへの途中,旧居留地を歩いているといつものお店のショーウインドウにどこかで見たことがある「抹茶と水無月」の版画が。ちょっとモヤモヤとしていた気持ちが晴れて,とても素敵なティータイムを過ごすことができた。悪いことはすぐ忘れることにしよう!

版画にマッチした色合いの額になっている!




2023年6月5日月曜日

木版画の会

今日は6月の第一月曜日,木版画の会。中央区の文化センターの美術室に9人の木版画愛好者が集まった。今日はHさんの「回転版画?」のデモがあった。木の板を彫刻刀で彫り,それに絵の具を載せてバレンで和紙に摺るという伝統的な版画ではなく,段ボールにハサミやカッターで切れ目を入れたり,木の葉やネットなどを自由に配置 したりで構図を作る。ミソはその版を回転させて色を重ねるところにある。今日はすべての材料や道具をHさんが用意してくださった。


道具の準備は完了

材料はそれこそ何でもあり!

Hさんによる概要の説明のあと,いきなり各自それぞれ作品作りに挑戦することになった。Hさんのデモを見るだけだと思っていて,心の準備ができていない面々は戸惑いながらも果敢に挑戦!今日用意された絵の具は,黄,赤,青の3色だけ。したがって回転も3回。さてどんなものが出来上がるか。もちろん全員初めての体験。

真剣そのもの

まずは黄色から色をのせる

全員すごく抽象的で素敵な作品が出来上がった。すべてアップロードしたいのだが,こればかりは皆さんの許可が必要。責任をとって僕が作ったものだけアップロードすることにした。抽象的なものには憧れがあるが,やはり凡庸な僕は「型にはまった」ことから抜けきれない。先月に聴いた藤村美穂子さんの歌のイメージなんだが,中途半端なものになってしまった。次はもう少しイメージを膨らませて構図を考えてみよう。もっともこればかりは,回転の角度,色の重なりなどいろんな要素があるので,出来上がりが予想できない。それが魅力なのかもしれないが,,,。


会の終了後,何人かと蕎麦ランチを楽しむ。趣味や道楽が共通の素敵な人たちと月に一度会って,美味しいものを食べながらの四方山話ほど楽しいことはない。

2023年5月30日火曜日

小満:酒に溺れる梅

二十四節気は点で定義されるのか,それとも期間で定義されるのか?「二至二分」(夏至,冬至,春分,秋分)はもちろん科学的に点で定義されるんだろう。またそれらの中間点である「四立」(立春,立夏,立秋,立冬)も必然的に点で定義される。しかし,これらの8個の点で区切られた8個の期間をそれぞれ三等分するその他の16個の節気については「三当分」という言葉が示すようにどうも期間で定義する方が自然な感じがする。

たとえば,小満は5月21日に始まり,次の節気の芒種の前日6月5日までの期間を指すと考えることもできる。というわけで遅ればせながら「小満」の木版画。篆刻は2年前のものと同じ。題名は「酒に溺れる梅」。

身も蓋もある梅酒

梅酒を作るのは楽しい。でも梅酒を飲むのはもっと楽しい。



2023年5月8日月曜日

木版画の会

 四月から木版画の会と称して,気楽に木版画を楽しむ会が立ち上がった。今日がその2回目。この木版画の会は県立美術館で知り合った木版画愛好者の気楽な集まりだ。2019年度の前期に始まった県立美術館・美術講座(木版画コース)も4年が経過し,先生が本田このみ先生から新しい先生に交代することになった。これを一区切りとして,

  • 引き続き来季も美術講座で新しい先生の指導を受けたいが,毎週の出席が難しい人
  • 同じく,金曜日の都合が悪く来期は出席できない人
  • 木版画はこれからも続けたいが,美術講座は来期一休みしたい人
  • もちろん美術講座は続けるが,それ以外にも木版画を楽しみたい人

を念頭に,版画の作業や版画を出汁にして談笑をする会を始めることにした。予想通りベテランが10人あつまった。決して無理のない範囲で月に一度集まろうという気楽な会。参加費は500円,もちろん参加できない日は払う必要はない。参加費は会場費に充てるつもりだ。事務手続きは一番若い僕が担当する。

今日は,大ベテランのMさんと二回目から参加のHさんが回転版画なる新しい手法で作った版画を紹介してくれた。参加者全員にHさんから手製のマーマレードのプレゼントまであった。楽しい会になりそうだ。

抽象的な木版画(回転版画)

次回は6月5日の月曜日の午前。Hさんが道具を用意して回転版画のデモンストレーションをしてくれる。楽しみだ。



2023年5月5日金曜日

立夏:絵に描いた柏餅

今日は子供の日。柏餅の木版画を作ってみた。まさに「絵に描いた餠」。ちなみに英語では,餠でなくパイ。Pie in the sky どこでも食べ物はわれわれにとって重要課題のようだ。 

柏餅の整列


ところで,一つ一つの柏餅は,何の変哲もない稚拙な柏餅の絵なんだが,それらを20個並べると様になる。質より量だ。

実は,このスタイルは僕の専門分野と共通している。学部でも大学院でも統計学入門の講義は「統計学とはどのような学問か」という問いかけで始めることにしていた。答えは「個を個として見ていては見えないことも,個の集まりである集団としてみれば何かが見えてくることがある」,「統計学はこの集団を分析し,何かを見出すための学問である」。このことを阪神大震災の例などを示して説明することを講義の導入としていた。木版画もこのスタイルでやってみよう。

明日は立夏。これを機会に二十四節気の木版画と篆刻の新しいバーションを作ってみようかという気持ちになっている。

早朝の
陳列棚に
柏餅

帰り道
売れ残りたる
柏餅


2023年4月1日土曜日

Die Mainacht(五月の夜)

4月になったばかりで早すぎるし,まだ改善の余地は残っているが,とりあえず一つ木版画をアップロード。出来上がったものを手元に置いておくと落ち着かない。ブラームスのドイツ歌曲 "Mainacht(五月の夜)"を聴いていて浮かんだイメージをそのまま木版画にしてみた。相変わらず小学生の図工の宿題のような絵柄だが,月に関する第二章だ。

Wann der silberne Mond durch die Gesträuche blinkt,
Und sein schlummerndes Licht über den Rasen streut,
Und die Nachtigall flötet,
Wandl' ich traurig von Busch zu Busch.

愛聴盤はナタリエ・ストゥーツマン(Nathalie Stutzmann)というコントラルト歌手(👉こちら)。大好きな曲だ。

Mainacht

まあ何となくの妄想のイメージなんだが,実はこれは半年間滞在したマールブルグ大学の宿舎の窓から見ていた景色に似てなくも無い。振り返れば,もっとも熱心に講義の準備をしたのは,ドイツでの半年間だったように思う。春から夏にかけてドイツは日が暮れるのが遅く,こんな風景が記憶に残っているというのはきっと夜遅くまで準備していたんだろう。ドイツに到着したのは今から25年前の今日だ。

春の月 ドイツは遠く なりにけり



2023年3月31日金曜日

朧月夜

明日から4月。朧月夜の木版画を作った。実際の景色を見たわけでは無いが,歌のメロディーや歌詞から浮かんだイメージを木版画にしてみた。風景は正確では無いが,似た風景はこの裏六甲ではよく見られる。鳥居はどれも石造だから本当はグレーなんだが,フィクションで赤にしてみた。まさに紅一点。夜の風景に灯りが灯ったようだ。

図柄は極めて単純。それでも4枚の板を用いている。苦労したのは摺り。菜の花の色と,もちろん月の朧。菜の花は英語で フィールドマスタード(field mustard) だ。しかし辛子色の濃い黄色(イエローディープ)にすれば収穫時の稲のようになる。そこでレモンイエローと下部にライトグリーンの「付け合わせぼかし」を用いた。これで菜の花畑らしく軽くなった。

朧月は悪戦苦闘。プルシャンブルーの絵の具を伸ばした後,彫り込んだ月の周りを刷毛でボカすのだがこれが至難の技。実は今回はちょっと気取ってエディションナンバー付き,5枚(A.P.を含めて全部で6枚)摺ったのだが,朧の大きさや濃さ,すべてまったく別物のようになった。朧はまだまだ改善の余地がある。

朧月夜

小説でも音楽でも,どうも僕は月が好きなようだ。月は狂気を呼ぶ (lunatic)。僕の心には闇と狂気が潜んでいるのかもしれない。これまでに作った木版画にもしばしば月が登場する。これからしばらくは,月に関する木版画に取り組んでみよう。朧月夜は月に関する第一章。


2023年2月18日土曜日

県立美術館美術講座・木版画コース講評会

10月から半年間続いたこのみ先生の木版画コースも今日(2月17日)でいよいよ終了。今日は半年間の成果の講評会。課題は「空摺り」と「折本」。教室の前方のテーブルにズラリと力作が並ぶ。名目上は初心者コースなんだが,作品を見るとセミプロ級。事実,中には見るからに芸術家という方もおられる。受講生一人一人の作品説明にも力が入る。それぞれの作品にはそれぞれの背景があるわけだ。このみ先生はいつものように「褒めながら」も的確なコメントを次々と加えていく。そうだ!教育とは「褒めることなんだ」とあらためて実感。

ズラリと並んだ力作

すべての作品を講評するこのみ先生

毎回の講評会で思うのは,他の方々の作品と比べて自分の作品(作品と呼べるかどうかも疑問)の拙いこと。今回も四年間,本田このみ先生に指導してもらってこの程度のものしか作れない自分の限界をひしひしと感じた。

このみ先生の木版画教室は今期でおしまい。来期から先生は新しい先生になる。これを機に木版画はとりあえず半年間一休み。ここでちょっとゲネラル・パウゼだ。趣味や道楽は,自分自身が楽しめればそれだけで十分だが,それで周りの人もちょっぴり「にっこり」できればもっと良い。半年いろんな本を読んだり,いろんな映画を観たり,いろんな所を訪れて,これは是非周りの人にもちょっぴり「にっこり」してほしいというような題材を見つけたら再開しようと思う。


講評会の後:懇親会(まさに老若男女)

2023年2月3日金曜日

金曜日の午後

毎週金曜日は木版画教室。教室の終了後,古くなった懐炉(カイロ)のバーナー(触媒)を買いに元町のzippo-LAND G.(ジッポーランドG)へ向かった。どうも「使い捨て」という言葉の響きが嫌で,僕はこのように気化熱を利用した「使い捨てない」カイロを使っている。ポケットに入れているとポカポカと暖かい。たまに手で触われば指先も温まる。この「使い捨てない」カイロは,最初は触媒のバーナーにライターの火を近づけて温めるものの,その後は化学反応の気加熱を利用するので一切火は使わない。

Zippo Handy Warmer

お店に向かう途中,もしかしてと例のお店のウインドウを覗いてみると,やっぱり二月の木版画,クリスマスローズが。明日は立春。しかしまだまだ寒さは厳しい。

見覚えのあるクリスマスローズ








2022年12月6日火曜日

クリスマスカード2022

アトリエノーベンバーにお願いしていたシュトレンも出来上がったとの連絡があり,いよいよクリスマスだ。今年もクリスマスカードを作成した。今年は正統派,ポインセチアの図柄に決めて,写生するため早速街の花屋さんで鉢植えを購入した。480円。

ポインセチア

しかしもともと絵を描く才能がゼロの僕にとって写生は難関中の難関。結局いつものようにマンガのような図案になってしまった。花は上から見ているのに,鉢は横から見ているという理屈に合わないチグハグなものになってしまった。

赤いポインセチア

ポインセチアに見えるといいのだが。上にMerry Christmas !と文字を入れたので,ポインセチアと認識してもらえるといいのだが。一つでは寂しいので,色を変えて黄色いポインセチアも摺ってみた。 

黄色いポインセチア

紙はニューブレダン紙という版画用紙(ポストカードサイズ)。表面に微妙な凹凸があるのでザラザラ感が増し,ちょっぴり木版画らしくなる。ものによって用紙を使い分けるのも面白いかな。


2022年11月18日金曜日

アドヴェント

今月の27日はドイツではアドヴェントが始まる日だ。そろそろクリスマスの準備だなあと街を歩いていると,いつものお店のショーウインドウには既にクリスマスカードが飾られていた。

見覚えのある積み木のクリスマスツリー

シュトレンは既にアトリエ・ノーベンバー(Atelier11)に注文した。クリスマスについては準備万端。



映画観にいってきました

最近かなり精神が疲れているような気がしたので,昨日気晴らしに三宮のシネリーブルで,封切りされたばかりの映画を観た。観たのはカズオ・イシグロのA Pale View of Hillsの邦訳『遠い山なみの光』を映画化したもの。 地下一階おしゃれなエントランス 入り口のポスター,お気に...