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2025年8月14日木曜日

平家物語

ずっと前に,平家物語の最初のくだりから「祇園精舎」,「盛者必衰」という二つの判子(篆刻)を作ったことがある。今回それらに「諸行無常」,「沙羅双樹」を加えてとりあえず最初のくだりにある四文字熟語はすべて揃った。

祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり

娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす

せっかくだから,琵琶の版画を作成し,そろった四つの篆刻をそれに添えた。平家物語も一郎刻も版画で作成。筆で書くと下手くそな字も版画にすればなんとなくそれらしい。名前の下の落款は「一老山人」,自分でつくった雅号だ。一郎の「郎」の代わりに老人の「老」としている。字はなんとなく斉白石スタイル。写真は版画作成のモデルとした実際の琵琶。




2023年10月9日月曜日

ラテン語始めました!木版画はしばらくお休みします。

七十歳を機にラテン語の勉強を始めた。特に目的があるわけでは無いし,これからの人生に役立つことはまったく無いだろう。何よりもそれがものになる可能性はほとんどないのだが,何か新しいものに挑戦したくなった。

実は四十歳を少し過ぎた頃,ラテン語に挑戦したことがある。経済学の「お勉強」の過程で,Q.E.D. (quod erat demonstrandum;証明終り)や,ceteris paribus(他の条件を一定として)などラテン語の表記を目にすることが多かったから,少しかじってみたくなったのだ。  日本語の辞書や教科書は揃えたが,忙しさにかまけてほとんど手をつけることができなかった。定年退職時,蔵書はごく一部の幾何学や紋様の本を除きすべて処分したため,今回改めてテキストを購入した。

新しく購入した教科書。600頁以上の大著。

まだ,すこし読み進めただけであるが,今のところとても分かり易くラテン語の勉強を楽しめている。こんどは「経済学」という雑念(?)もなく,じっくり学べば楽しめそうだ。何よりも,ものになってもならなくても,人生の最後のフェーズでラテン語を勉強できるということは幸せなことだ。そう思うとラテン語の「難解さ」さえ楽しめそうな気がする。

というわけで,木版画と篆刻はしばらくお休み。5月の立夏から続けてきた「新二十四節気」も最近どうも「どこにでもあるような,何の工夫もないありふれた図案」を,彫って摺るだけになっていたから,ちょうど良い充電期間と考えている。彫ったり摺ったりは,適度な「肉体の疲労」と「時間の経過」を伴うため,「仕事をした気持ち」にしてくれるが,実は「創造的活動」とはほとんど関係がない作業なのだ。

彫りや摺りではなく,何を木版画にするかを探し出すこと,つまりイメージを作り出すことが一番重要で困難なことだ。充電期間に「ラテン語」の勉強や,最近ハマっている万葉集を足がかりとする小旅行で,木版の題材を探したい。それが木版画における僕のスランプ脱出法だ。どうしても誰かに伝えたいイメージが浮かべば,それを木版画にしよう。

2023年9月18日月曜日

秋分:月見れば千々にものこそ

週末は秋分。まだまだ暑い日は続くが,確実に日の長さは短くなっている。秋はすぐそこまで来ている。今年の中秋の名月は秋分のほぼ一週間後9月29日だが,やはりこのシーズンのメインイベントはお月見。満月に月見団子というのはあまりにもありふれているので,木版画は「月見そば」とした。

月見そば

表題は百人一首第23番

月見れば 千々にものこそ悲しけれ わが身ひとつの秋にはあらねど

 大江千里(古今集193)

から。見ればの「れ」を「そ」に替えただけ。「月見そば」と一気に読まず,「月」の後に一呼吸いれて読めば,より自然に下句に続くだろう。篆刻は「秋分」。まあ版画に関しては図案も技法も稚拙だが,篆刻そしてユーモアのある文とのセットで,見た人にちょっぴりニッコリしてもらえれば,それだけで良いと思っている。

2023年9月7日木曜日

白露:サティ,梨の形をした三つの小品

九月に入ってちょうど一週間が経った。明日9月8日は白露。まだまだ暑い日が続くが,秋の気配を感じる時も多くなった。この時期は特にみずみずしい梨が美味しい。エリック・サティの「梨の形をした三つの小品(Trois morceaux en forme de poire)」に触発され,何となく二十世紀,幸水,豊水(左から順)三種を木版画にした。ちょっとセザンヌ風。篆刻は白露。

梨の形をした三つの小品

子供の頃,梨といえば「二十世紀」だった。というより果物屋さんには「二十世紀」しか無かったような記憶がある。調べてみると「二十世紀」が1880年代,「幸水」と「豊水」がそれぞれ1950年代,1970年代に開発された品種だそうだから,それも頷ける。家で食べる梨は決まって「二十世紀」だった。三種の梨はそれぞれ特徴があって美味しいが,僕はやはりシャキシャキ感が強い「二十世紀」が一番好きだ。

西洋梨は,日本の梨とは全然違う。食べると,シャキシャキ感はなく滑っとした感じだ。もちろんそれはそれで濃厚な味がして,美味しいのだが,,,。キシェロフスキーの「トリコロール/赤(Trois Couleurs: Rouge)」で,イレーヌ・ジャコブが「梨のブランデー」を一口飲んで咽せるシーンがある。どんなものだろうと気にはなっていたが,当時日本ではそんなブランデーは一般的でなく,見つけることはできなかった。

2006年の夏,学会報告のためウイーンを訪れた時,乗り継ぎのパリの空港の免税店で梨のブランデーをふと目にし,映画を思い出して購入した。ブランデーとはいうものの無色透明で,見た目は日本の焼酎に近い。麦焼酎,芋焼酎というのがあるのだから梨焼酎があっても不思議でない。予想どおり西洋梨の匂いほのかにする焼酎のようだった。不味くはないのだが,やはり色も香りも琥珀色のコニャックには敵わない。コニャックのように楽しむのではなく,バニラエッセンスを作る時のラム酒の代わりに使った。

梨のブランデー(ラベルにPoireの字が見える)


2023年7月20日木曜日

大暑:苦み走った男の味

連日30度越えの猛暑,場所によってはほぼ40度。大暑は次の日曜日,7月23日だが,もう我慢の限界。暑い時に冷たいものも良いが,暑い時に食べる熱い沖縄料理は格別。というわけで新二十四節気の木版画は,ゴーヤチャンプルー。

ゴーヤチャンプルーと黒いフライパン

卵,豆腐,豚肉は非現実的だが,すべて四角形。あえて色を薄めにして重なりを作り炒めている混ぜくり感を出した。「苦み走った男」が作る料理は苦いはずだが,苦味とは程遠い僕には分からない。暑い夏を何とか生き延びよう!


2023年7月6日木曜日

小暑:敵に塩焼きを送る

明日,7月7日は小暑。既に鮎漁は解禁され,近所の魚屋さんにも美味しそうな鮎の塩焼きが並んでいる。柏餅,水無月と和菓子に続き,「若鮎」という和菓子を題材にとも思ったのだが,すでに本物の鮎をデフォルメしたものだから,木版画にしてもそのままで面白みがあまりない。そこで鮎の塩焼きを少しだけデフォルメして木版画にした。昨年の5月四万十川を訪れた時に食らった鮎の塩焼きがモデルだ(👉こちら)。

鮎の塩焼き

鮎について」は,黒の一文字ぼかし,グレーと黄色の付け合わせぼかしなどいろいろ試みた。それぞれ妙なリアル感は出るのだが,焼き魚のカラカラ感が出ない。思い切って,グレー1色の「ごまずり」にしたところ,なんとなく塩焼きのカラカラ感がでた。今回は安易だがこれで行こう。

敵に塩を送るという諺がある。上杉謙信が,塩不足に苦しんでいる敵,武田信玄に塩を送ったという故事に基づいている。塩をもらった敵は嬉しいだろうが,鮎の塩焼きならばもっと嬉しいだろう。

旧居留地界隈:いつものお店のウインドウ



2023年6月20日火曜日

夏至:夏の小豆三角形

明日,6月21日は夏至。一年で一番日の長い日だ。もちろんこれは北半球に住むわれわれにとってであって,南半球では一年で一番夜の長い日になる。今年立夏から再開した二十四節気,柏餅,梅酒,フランスパンと食べたり飲んだりのものばかり。新二十四節気の版画はともかくできるところまで,食べたり飲んだりの路線で走ってみよう。

六月の食べ物といえば,月名そのものの和菓子「水無月」。京都では6月30日,「夏越の祓」で食す。

「水無月の夏越の祓いをする人は千歳の命のぶというなり」

というわけで,夏至の版画は和菓子の水無月。水無月だけでは寂いしいので,茶筅付きの抹茶を添えた。夏らしい色合いにするため茶碗の色は,実際にはあり得ないが薄いピンク。参考のため,実際に近くの和菓子屋さんで購入した本物の「水無月」の写真も示しておく。

二種類の水無月と抹茶

満月堂の水無月

ところで水無月が三角形の形をしているのには訳がある。三角は暑気を払う「氷」を表し,上にのせられた「小豆」は邪気を払うことを表しているとのこと。

「夏」,「三角形」といえば夜空の星座,ヴェガ,デネブ,アルタイルからなる「夏の大三角形」だ。そこで木版画に添える文字は大三角形の「大」と小豆の「小」を対比させた「夏の小豆三角形」。篆刻はもちろん「夏至」。今年もなんとか暑い夏を乗り切るぞ!







2023年6月6日火曜日

芒種:6月のパン(June Bread)

今日,6月6日は芒種。この頃は麦や米のように芒(のぎ)のあるものを植える時期とのことだ。確かに米は今植え付けの時期だが,麦は今が収穫時期。しかし,芒と言えばやはり麦。そこで「芒種⇨芒⇨小麦⇨パン」という連想でフランスパンを版画にしてみた。「芒種⇨芒⇨大麦⇨ビール」という連想もあったのだが,,,。

バゲット,バタール,ブール三種盛

パンのザラザラ感を,和紙ではなくニューブレダン紙という洋紙に「ゴマ摺り」することで表している。木箱は同色を二度摺ったり,一部は三度摺ったりすることで濃淡によって奥行きをだした。

昨日木版画の会の帰りにAtelier Puntasに立ち寄りこのみ先生にアドバイスをいただいた。最初木箱の色は黄色に少し白を混ぜたものだったのだが,黄色は同色を重ねてもその効果があまり見えない色ということだ。先生のアドバイスで,バーントシエナと黒を少し加えることで,より実際の木箱に近い色に変えると濃淡がはっきりし箱に奥行きが出た。

もう一つ,パンの色にも奥のものと手前のものに濃淡をつけるというアドバイス!それも絵の具を薄くするのではなく板にのせる絵の具の量で濃淡を調整する。さすがプロは目の付け所が違う!先生のおかげで,小学生の絵がすこしだけ大人の絵になった。

木箱の印字はJune Bride(六月の花嫁)をもじってJune Bread(六月のパン) 。木箱の印字をつけることでパンだけでは出ない季節感が少し出たような気がする。再スタートした二十四節気,気がつけば,柏餅(立夏),梅酒(小満),フランスパン(芒種)と食べたり飲んだりするものばかり。しばらくこの路線を続けてみうよう!

処暑:二十四節気

明日8月23日は処暑。まだまだ暑い日が続くが,時折秋の気配を感じることが多くなった。 小学生の頃住んだ家の裏隣には小さなお地蔵さんがあった。お地蔵さんは小さな建物のなかに祀られていたため,直接それを見たことはないが,おそらくこのような感じだったんだろう。お地蔵さんは地域の人々によ...