2023年9月18日月曜日

秋分:月見れば千々にものこそ

週末は秋分。まだまだ暑い日は続くが,確実に日の長さは短くなっている。秋はすぐそこまで来ている。今年の中秋の名月は秋分のほぼ一週間後9月29日だが,やはりこのシーズンのメインイベントはお月見。満月に月見団子というのはあまりにもありふれているので,木版画は「月見そば」とした。

月見そば

表題は百人一首第23番

月見れば 千々にものこそ悲しけれ わが身ひとつの秋にはあらねど

 大江千里(古今集193)

から。見ればの「れ」を「そ」に替えただけ。「月見そば」と一気に読まず,「月」の後に一呼吸いれて読めば,より自然に下句に続くだろう。篆刻は「秋分」。まあ版画に関しては図案も技法も稚拙だが,篆刻そしてユーモアのある文とのセットで,見た人にちょっぴりニッコリしてもらえれば,それだけで良いと思っている。

2023年9月7日木曜日

白露:サティ,梨の形をした三つの小品

九月に入ってちょうど一週間が経った。明日9月8日は白露。まだまだ暑い日が続くが,秋の気配を感じる時も多くなった。この時期は特にみずみずしい梨が美味しい。エリック・サティの「梨の形をした三つの小品(Trois morceaux en forme de poire)」に触発され,何となく二十世紀,幸水,豊水(左から順)三種を木版画にした。ちょっとセザンヌ風。篆刻は白露。

梨の形をした三つの小品

子供の頃,梨といえば「二十世紀」だった。というより果物屋さんには「二十世紀」しか無かったような記憶がある。調べてみると「二十世紀」が1880年代,「幸水」と「豊水」がそれぞれ1950年代,1970年代に開発された品種だそうだから,それも頷ける。家で食べる梨は決まって「二十世紀」だった。三種の梨はそれぞれ特徴があって美味しいが,僕はやはりシャキシャキ感が強い「二十世紀」が一番好きだ。

西洋梨は,日本の梨とは全然違う。食べると,シャキシャキ感はなく滑っとした感じだ。もちろんそれはそれで濃厚な味がして,美味しいのだが,,,。キシェロフスキーの「トリコロール/赤(Trois Couleurs: Rouge)」で,イレーヌ・ジャコブが「梨のブランデー」を一口飲んで咽せるシーンがある。どんなものだろうと気にはなっていたが,当時日本ではそんなブランデーは一般的でなく,見つけることはできなかった。

2006年の夏,学会報告のためウイーンを訪れた時,乗り継ぎのパリの空港の免税店で梨のブランデーをふと目にし,映画を思い出して購入した。ブランデーとはいうものの無色透明で,見た目は日本の焼酎に近い。麦焼酎,芋焼酎というのがあるのだから梨焼酎があっても不思議でない。予想どおり西洋梨の匂いほのかにする焼酎のようだった。不味くはないのだが,やはり色も香りも琥珀色のコニャックには敵わない。コニャックのように楽しむのではなく,バニラエッセンスを作る時のラム酒の代わりに使った。

梨のブランデー(ラベルにPoireの字が見える)


新二十四節気・冬至

今週末の土曜日(12月21日)は冬至。北半球では一年で夜が一番長い日だ。ただし日の入りが一番早いわけでも無いし,日の出が一番遅いわけでもない。日の入りから日の出までの時間が一番長いというだけだ。実は,日が暮れるのが一番早い日は冬至より少し前,日の出が一番遅いのは冬至より少し後にな...