九月に入ってちょうど一週間が経った。明日9月8日は白露。まだまだ暑い日が続くが,秋の気配を感じる時も多くなった。この時期は特にみずみずしい梨が美味しい。エリック・サティの「梨の形をした三つの小品(Trois morceaux en forme de poire)」に触発され,何となく二十世紀,幸水,豊水(左から順)三種を木版画にした。ちょっとセザンヌ風。篆刻は白露。
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梨の形をした三つの小品 |
子供の頃,梨といえば「二十世紀」だった。というより果物屋さんには「二十世紀」しか無かったような記憶がある。調べてみると「二十世紀」が1880年代,「幸水」と「豊水」がそれぞれ1950年代,1970年代に開発された品種だそうだから,それも頷ける。家で食べる梨は決まって「二十世紀」だった。三種の梨はそれぞれ特徴があって美味しいが,僕はやはりシャキシャキ感が強い「二十世紀」が一番好きだ。
西洋梨は,日本の梨とは全然違う。食べると,シャキシャキ感はなく滑っとした感じだ。もちろんそれはそれで濃厚な味がして,美味しいのだが,,,。キシェロフスキーの「トリコロール/赤(Trois Couleurs: Rouge)」で,イレーヌ・ジャコブが「梨のブランデー」を一口飲んで咽せるシーンがある。どんなものだろうと気にはなっていたが,当時日本ではそんなブランデーは一般的でなく,見つけることはできなかった。
2006年の夏,学会報告のためウイーンを訪れた時,乗り継ぎのパリの空港の免税店で梨のブランデーをふと目にし,映画を思い出して購入した。ブランデーとはいうものの無色透明で,見た目は日本の焼酎に近い。麦焼酎,芋焼酎というのがあるのだから梨焼酎があっても不思議でない。予想どおり西洋梨の匂いほのかにする焼酎のようだった。不味くはないのだが,やはり色も香りも琥珀色のコニャックには敵わない。コニャックのように楽しむのではなく,バニラエッセンスを作る時のラム酒の代わりに使った。
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梨のブランデー(ラベルにPoireの字が見える) |