明後日、7月23日は大暑,夏真っ盛り。日本中あちこちで花火大会が開催される時期だ。花火は夏の季語だ。事実,小学生の頃暮した加古川でも「川祭り」と称する大きな花火大会が夏に開かれていた。また一時期暮らしたフィラデルフィアでも独立記念日に花火大会があり所属していた部局のメンバーが花火が見える窓の大きなホテルの部屋に集まり花火を楽しんだ記憶がある。木版画の図案はモノクロームに近いイメージにした。花火が僕の頭の遠い昔の記憶のイメージであることを表している。篆刻は大暑。
| 花火 |
| 花火(小さな額入) |
7月7日は小暑,いよいよ本格的な夏の到来。木版画の絵は熊本と島原を結ぶ小さなフェリーボートとカモメ。実際にこのフェリーに乗ったのは4月の上旬,あいにくの曇り空で肌寒い日だったが,穏やかな有明海の心地よい船旅をカモメと一緒に楽しんだ。
雨の中の旅行だったが,原城をはじめ、長崎の外海(そとめ)や平戸の潜伏キリシタン遺産を訪ねた印象深い旅だった。その時の光景をそのままそっくり夏の青い空の風景に移し替えた妄想の産物。
| 有明海のフェリーとカモメ |
| 有明海のフェリーとカモメ(小さな額入) |
| クマモンフェリー |
6月21日は夏至。一年で一番昼が長い日。暦の上では、5月5日に既に夏になっているのだが、体感的には毎年夏至になって夏が来たなと感じる。夏の花と言えばやはりひまわり。ありふれた題材だが、なんとなくゴッホ風にしてみた。ゴッホは、働いていたころ毎年のように訪れた馴染みの国オランダの人だ。この人もとても真面目に生きた人だと思う。
| ひまわり(ゴッホ風) |
| ひまわり(小さな額入) |
アムステルダムのゴッホ美術館はもちろんのこと,30年以上にわたり共同研究をおこなった畏友の家に近いクレーラー・ミュラー美術館もまたたくさんのゴッホの作品を所蔵・展示しているすばらしい美術館だ。ゴッホ美術館は一度訪れただけだが,クレーラー・ミュラーは,共同研究の合間をみつけて都合3回訪れた。
もうヨーロッパに行くことはないだろう。活動範囲は家の近所がほとんど。しかし、まだまだThink globally, act locally‼️
6月6日は二十四節気の芒種。つまり芒(のぎ)のある植物の(種)を植える時期。具体的には稲の田植えの時期を指すようだが,やはり芒が絵にある方が芒種らしい。そこで芒のあるもう一つの植物である大麦の穂を木版画にした。ちょうど今は大麦の収穫時期。たくさんの芒があることを,いくつかのパステルカラーの麦の穂とその重なりでそれを表してみた。添えた篆刻はもちろん「芒種」
大麦と言えば,僕はケンローチの映画「麦の穂を揺らす風」を思い出す。ただし版画の麦の穂は風に揺られてはいない。アイルランドはとても行きたい憧れの国だったが,とうとう行くチャンスは来なかった。アイルランドはこの映画とフランク・オコナーを通してしか知らない(阿部公彦訳『フランク・オコナー短編集』岩波文庫)もちろんジェイムス・ジョイスも未読だ。憧れるには何も知らない方がいいのかもわからない。5月21日は啓蟄。小満の版画はさくらんぼ。ちょうど東北旅行を計画中に思いついた図案だが,実際に山形へ行くと,道沿いの果樹園のさくらんぼはまだ実っておらず,さくらんぼは小満の図案としては少々早すぎた。しかし遅れるよりは早めの方がずっと良い。
版画はいろいろなタイプを試行錯誤している最中。先ずは黒い線で輪郭を描くという方法(重主版法と呼ぶらしい)でやってみた。版は背景のグレー,さくらんぼの赤,輪郭の黒の3版だから比較的早く出来上がった。正確に言えば器は輪郭がなく黒がベッタリ。左端のさくらんぼの輪郭が少し欠けたが仕方がない。もっと細い線で輪郭を描きたかったが今の力ではまだまだ難しい。
| さくらんぼ(小さな額入り) |
5月5日は立夏,暦の上では夏の始まりだ。山も海もまさに「夏きたるらし」最初の二十四節気シリーズではプチトマト,二回目は梅酒を題材にしたが,今回はがらっと趣向を変えて飛魚と積乱雲。先日カミさんのお供で九州へ出かけた(前回の投稿参照)。用事があるのは大分なのだが,用事のあと足を延ばし島原,平戸を訪ねた。昨年訪ねた天草の潜伏キリシタン関連遺産がとても印象的だったので,今回は島原の原城跡,長崎外海,平戸の関連施設を訪ねた。
大分筋湯温泉、小松別荘を朝出発し,熊本港から小さなフェリーで島原港へ渡る。目的は原城。原城跡の海辺を散策しながら昨年訪ねた天草方面を眺めていると遠くのあちこちで魚が海面から飛び上がる。てっきりこれが、わがや御用達の「あごだし」の「あご」だと思い,それを図柄にしたわけだ。ただ訪ねたのは立夏の一ヶ月ほど前,あいにくの天気で雨模様だった。しかしそこは写真とは異なり,妄想もOK(論文ならデータ改竄でアウト)。青空と積乱雲を背景として立夏の木版画にした。上手下手は別問題として,夏の始まり感がうまく出せたと自画自賛していた。
| 飛魚と積乱雲 |
| 飛魚と積乱雲(小さな額入) |
ただ実際に有明海で見た魚の飛び方は少し自分が想像していた魚の飛び方と異なるので気になっていた。調べてみると,原城跡で見た光景はやはり、「あご」が飛んでいるのではなく,ムツゴロウの求愛ダンスのようだ。求愛ダンスは通常5月から7月らしいが,4月にも見られるとのこと。というわけで実際に見たものとは何の関係も無い図柄になったが,まあいいか。
4月5日は清明。桜(ソメイヨシノ)の花は花びらを個別に見るとピンクというより白だ。しかし花びらの集合はピンクに見える。僕の統計学の講義の枕「統計学とはどのような学問か?個を個として見るだけでは見えないものも,個の集まりである集団を観察すると見えてくるものもある。統計学は集団を取り扱う学問である」そのものだ。 そのような桜を表すために,ピンクの背景をところどころ花びらの形にくり抜いて白くした図案を作成した。なるほど満開の桜のように見える。
ただ桜だけでは寂しいので燕を二羽。しかしかえってわざとらしくなってしまった。何年か前に大分の中津城で満開の桜を見た。花見を楽しんだわけではないのだが,紅白幕がかけられていたのを思い出した。それも試したのだが,清明(Clear and bright)という言葉とは程遠い「呑めや歌えの酒池肉林」という感じになってしまったので没。
| 桜と燕 |
| 桜と燕(小さな額入) |
今年の清明には,桜を楽しむため中学・高校の友人と三人久しぶりに六甲台を訪れた。ちょうど日曜日で学生もいないため,本館,兼松記念館,図書館,そして僕の研究室のあった第五学舎などの間をぶらぶらしながら桜を楽しんだ。満開の時期は既に過ぎていたが,遠く大阪湾,淡路島を眺めるキャンパスの散策を楽しんだ。そして理・農・文学部の間を抜けて阪急六甲まで通学路の坂道を下り,酒池肉林とはいかないが,夕方三宮のフレンチ居酒屋でちょっぴりお酒とおしゃべりを楽しんだ。
Alcohol is the anesthesia by which we endure the operation of life.
by George Bernard Shaw
| 兼松記念館への階段と桜 |
| 図書館と兼松記念館の前提 |
| 三宮,海の向こうに見えるのは淡路島 |
| フレンチ居酒屋,酒池肉林? |
3月23日は春分。菜の花畑と蝶を木版画にした。菜の花を題材にするのは実は3回目。最初は2020年に始めた二十四節気の同じく春分。5本の菜の花を並べた単純な構図。どうみても菜の花には違いないのだが,視界に広がる菜の花畑には程遠い。2回目は2023年の朧月夜。一つ一つの菜の花は描かず,シンプルにレモンイエローとライトグリーンの付け合わせぼかしで,視界いっぱいに広がり,月光に照らされる山麓の菜の花畑を描いた。今回はその折衷案。レモンイエローとライトグリーンの付け合わせぼかしは同じだが,大きさの違う円を散りばめ,個々の菜の花を表した。少しは菜の花畑の感じがするかな?
| 菜の花畑と蝶(付け合わせぼかし) |
| 菜の花畑と蝶(小さな額入) |
本日3月5日は啓蟄。啓蟄の図柄は土筆(つくし)。モモ(柴犬)が生きていた頃(1995〜2011)この時期朝夕の散歩の際道ばたでよく見かけたが,今はもう土の道を歩くことはなくなってしまった。今でもつくしはあるのかどうかはわからない。しかしその特徴ある形状は忘れることはなく,子供の頃から脳みそに刻まれた記憶だけですんなりと描くことができた。構図は超クローズアップ。木を見て森を見ずの典型だがそれなりに面白いものができた。色遣いが難しい。
| 土筆 |
テクニカルデータ:
本日は立春。暦の上では春の始まり。事実少し暖かい。しかし油断は禁物,週末はまた寒くなるらしい。立春を機に再び二十四節気の木版画を始めることにした。今回は,最初のチャレンジ(2020年から2021年),2回目のチャレンジ(2023年から2024年)に続き3回目の挑戦だ。2回目では判子は最初とほぼ同じだが,「穀雨」,「大雪」,「冬至」については新しく作成した。今回ももう一つという判子は新たに刻す予定だ。
一ヶ月に2つ図案を考え,それを板に彫り,さらに絵の具をのせて紙に摺るのは大変な作業。彫り,摺りという肉体的作業はともかく,図案を考えるのが一番大変。これは研究も同じで良いテーマを探し出すというのが一番重要で大変。そのことに悩まされ続けた40年だった。いつまで続くかわからないが,いろいろなものを見て,観察して,あれこれ頭で考えることは「ボケ」防止になるだろう。今年73歳になる。
というわけで立春の図柄は近所の植物園に咲く蝋梅(ろうばい)。単純な構図だがそれなりに手間はかかっている。蝋梅の花だけでも4版。花びらの重なりで透明感を出そうとこころみたが,色の濃さの加減が難しい。蝋梅というものの普通の白梅や紅梅のように五弁ではなく多弁(蝋梅は英語ではwintersweet,梅とは全く関係ない)。絵では十弁にしている。蝋梅の透明感を出すためにできるだけ薄い黄色(クロームイエロー)を用いたが,それでも三層重なる場所は結構濃い色になってしまう。まったく満足のいくものではないが,立春の判子,背景のサーモンピンク(スカーレットレイキ+白)で,なんとなく蝋梅,より詳しく言えばこの時期,この花の色と図柄では消去法で蝋梅しか思いつかないだろう。
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| サイズは葉書サイズ 季節の便りに使えるように下部に十分な余白をとった |
実はこの版画の絵柄のサイズは,最近凝っている小さな額のサイズ。サーモンピンクの背景とともに切り抜くとピッタリと収まるようになっている。つまり部品の共有化だ(笑)。実際に額に入れたものが下。次は2月19日の雨水,どんな図柄が良いか,,,。頭が痛い。
| 背景はLPレコードのジャケット ジョージ・ウインストンのWinter into Spring. |
テクニカルデータ:
明後日、7月23日は大暑,夏真っ盛り。日本中あちこちで花火大会が開催される時期だ。花火は夏の季語だ。事実,小学生の頃暮した加古川でも「川祭り」と称する大きな花火大会が夏に開かれていた。また一時期暮らしたフィラデルフィアでも独立記念日に花火大会があり所属していた部局のメンバーが花火...