梅雨入りする前に,いつもの三人で会おうということになり,橋梁のT君が神戸御影界隈を散策後,灘五郷の酒蔵で食事をするというプランをアレンジしてくれた。お天気は快晴というわけではないが,強い雨が降るわけでもなし,蒸し暑いというわけでもなし,肌寒いというわけでもない過ごしやすい1日になった。
JR住吉駅で午後3時に待ち合わせ。僕は神戸在住とはいうものの六甲山の裏から近距離郊外の市バス(つまり一律210円という定額路線ではない)で30分から場合によっては40分かかるので,心理的距離は京都や大阪から来るのとそんなに変わらない。ただ楽しいことで出かけるのは,移動も楽しい。
行き当たりばったりの僕とは違って,真面目で計画性のあるT君,全行程をきちんと計画,まずは,白鶴美術館でちょうど開催されていた中国美術コレクションを鑑賞することから始めることになった。
白鶴美術館:立派な建物 |
中には最近知り合いのお茶の達人の影響で少しは知識がある天目茶碗もあったが,主たる展示は周の時代の青銅器。自然科学の二人は青銅器の本来の色について化学反応の観点からいろいろ類推や議論をしていたが,文系人間の僕にはちんぷんかんぷん。僕はそれより,このような建物,このようなコレクションを保有するとは,酒屋さんというのは儲かるんだなあ,とまさに三流経済学者の発想。しかし「夏,殷,周,秦」 …で始まり「宋,元,明,清,中華民国,中華人民共和」で終わる歴代の中国王朝は三人ともいまだに誦じて言えた。それを覚えたのは約60年前。前にも言ったように三人は中学・高校ともに同期だ。
T君からこの後は,御影住吉の高級住宅街を散策し,途中あるカフェでアフタヌーンティーを食べ,その後夕食は酒蔵のレストランへという予定と言われ,三人で少しずつ山を下ることにした。確かに大きなお家ばかりで圧倒される。こういうのをマンションと言うんだろうな。
大きな家で塀の中は見えない。 |
余談だが,日本では集合住宅,英語で言えばコンドミニアムのことをマンションと呼ぶが,実はマンションの本来の意味は大邸宅。日本でマンションを新たに購入した日本人が,それを機会に,ちょっとしたカクテルバッフェを開いて,アメリカ人の友人を招待した。バッフェもそろそろお開きといいう時,アメリカ人が一言。「ところで,新しく買ったマンションにはこれから連れて行ってくれるの?」
ちなみに和製英語にはこのような誤解が生じることが多い。たとえば中学や高校で履いていた白い体操用のパンツをトレーンングパンツの省略形とかでトレパンと言うが,英語圏の人はトレーニングパンツと言われると,子供がおむつを取るために練習するパンツを思い浮かべるから注意!話を元に戻して。途中,カフェで一休み。
晩御飯のことを心配しながらも,やっぱり食べてしまったアフタヌーンティー |
途中見かけた水車 |
阪神魚崎駅近くの酒蔵まで,住吉川の堤防の内側にある遊歩道を散策する。どうも僕にはこの川の流れは人工的に制御されたように見え,自然の中を歩いているという感じがしない。土木の専門家や地質の専門家である二人は,しきりに「水の制御」という観点からいろんな話をしているのだが,僕には話の内容がよく理解できない。
ただ「人工的に感じる」という僕の感覚は正しいとのこと。実は,この川の上流にある渦森台の造成で出た土砂をこの川に沿って運んで降ろしたとのこと。そしてその土砂を運ぶ上り下りのトラックのための道路が,この遊歩道の起源ということだ。いつもながら,異分野の友人と話すといろんな知識を得ることができる。
しかし,水が流れを見ていると以前作った四万十川の木版画にはあまり川の動きが無いことが気になってきた。木目だけでなく,すこし工夫が必要かな。
四万十川:虹色鯉のぼりの川渡し |
歩くこと30分,灘の酒蔵に到着。立派な酒蔵だ。そう言えば城南宮の梅見の時も伏見の酒蔵のレストランだった。いつものように美味しいお酒と,料理,何よりもおしゃべりを楽しんだ。それぞれの近況報告で始まったおしゃべりで,今回は先日NHKのプロジェクトXで取り上げられた「明石海峡大橋」の話題がとても興味深かった。橋梁のT君はこの吊り橋の設計に関わった専門家。番組では取り上げられかった他の重要な問題について熱く語ってくれた。彼は橋と風の関係(自然系のことはよく理解できなくて,こんなザクッとした説明しかできなくてごめんなさい)についての専門家だ。
レストランの立派な入口 |
なんといってもここでしか飲めない日本酒 |
料理もすべて日本酒にマッチするように用意されている |
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