アメリカの東海岸との時差はほぼ半日。日本の方が半日進んでいるから,ほぼ半日の飛行時間で出発時と到着時が同じような時間になる。事実飛行機は午前中に出発し,同日の午前中に到着する。ヨーロッパの場合はお昼に出発して,夕方に到着だから飛行機の中で眠れなくとも到着後にホテルでゆっくり眠れば良い。またアメリカの西海岸との時差は16時間。夜出発するため,自然に飛行機の中で眠ってしまい,目を覚ませば朝である。つまり到着した日から仕事ができるのである。復路も似たようなものである。
しかし上述のように東海岸の場合は,午前中出発のため,なかなか飛行機の中で寝付かれず,到着した日には睡魔との戦いで仕事にならない。飛行機の中でなかなか眠れない原因の一つが「ゴーッ」という風切り音とエンジン音だ。そのためノイズキャンセリング機能のついたBOSEのヘッドホンを使っていた。なかなかの優れもので,「ゴーッ」という音はほとんど聞こえず比較的楽に眠りに入ることができる。
2002年から2005年までの間IMFのSさんとの共同研究のため,たびたびワシントンDCを訪れた。その時このヘッドホンを購入した。仕事を一生懸命したのはもちろんだが,仕事の後は,彼女とタイ料理や中華料理,南米料理,時にはジョージタウンの高級レストランなどで食事を楽しんだ。朝食,昼食はIMFの内部で済ませることがほとんどだったが,流石にIMFだけあってレストランもすべてが洗練されていた。その時の仕事(→こちら)が実を結び陽の目をみるまでには10年もかかったが,共同研究者として彼女の献身的な働きのおかげで,その成果は僕の研究者人生でもっとも重要なものの一つになった。
その後ヨーロッパへの出張でもずっとこのヘッドホンを使い続けたが,流石に長く使っているうちに,それも飛行機の中で眠りながら使うわけだから,寝返りをうった時にヘッドバンドとスライダの部分が壊れてしまった。接着剤で修理をして,使っていたがイヤパッドもボロボロになって(イヤーパッドの交換はとても高価)使いにくくなった。
もう飛行機にのるようなことはないだろうが,新しいヘッドホンを購入した。新しいBOSEはケーブルがなく無線,とてもスタイリッシュだ。バッテリー充電式なので電池切れの心配もない。さらに自動で電源が切れるという親切さである。
飛行機でつかうことはないが,ノイズキャンセリングのおかげで家の中でも自分一人静寂の世界に浸ることができる。音楽を聴く必要はない,何も音を聴かないためにも使えるヘッドホンだ。ただBOSEの音はソフトに作られているのか,これで聴けば僕のクラリネットの音もなかなかのものだ。音を正確に再現するモニター用のヘッドホンなら僕のクラリネットなど聴けたものじゃない。
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