2021年4月25日日曜日

A place I have never been (V): The Suez Canal in the Middle East(中東,スエズ運河)

 一ヶ月ほど前に日本のコンテナ船がスエズ運河で座礁したというニュースがあった。交通が遮断されそれは大変な事故だったのだろうが,犠牲者が出たとか怪我人が出たとかいう話ではなかったので少しは気が楽だった。ただ,研究者生活の最後の時期は,ほぼ生産ネットワークの計量経済学的分析に費やしたが,まさにネットワークが切断されるという例だった。

不謹慎かもしれないが,事故そのものよりも衝撃を受けたのは,コンテナ船に山積みされたコンテナの多さである。生産ネットワークを勉強していながら,現実のロジスティクスのそんなことも僕はしらなかったのだ。

事故がなければ,とてつもなく大きなコンテナ船が整然とスエズ運河を適当な間隔をあけて次々とゆっくり,ゆっくりと進んでいく光景は壮観そのものだろう。その妄想を木版画にした。何せ行ったことがない所を,ただただ空想に任せて描くのであるから,嘘も多い。

K大で同僚だったHさんは現在Q大の教授だが,かつてN郵船に勤めていた。彼はロジスティクスのエキスパートだ。彼がN郵船からK大に赴任した直後に,阪神淡路大震災が起こった。当時,学部執行部にいた僕は,次々と入る様々な情報にどのように対応すれば良いかがわからず右往左往するばかりだったが,頑張るのが人一倍苦手な僕がなんとか頑張れたのは彼の強力なサポートのおかげだと感謝している。

その後,彼とは研究上の交流も始まり,中国へも,国内では北海道へもロジスティクスの調査で同行した。すこし版画が心配になって,久しぶりにHさんに連絡して聞いてみた。質問は「スエズ運河からピラミッドは見えるか?」というものだ。答えはノー!見えないらしい。しかし彼は「版画にピラミッドがあっても構わないんじゃない」と言ってくれた。何せ妄想の世界なんだから。オレンジ色の灼熱の太陽と,遠くに見えるピラミッドは,コンテナ船がスエズ運河を通っていることの象徴なのだ。

そのついでに,彼から別の問題点を指摘された。今はもうNYK LINEのコンテナ船は存在していない。三つの大きな船会社が共同で新たなコンテナ船を運航しているとのこと。しかしその写真を見るとなんとも,ピンク色の船が僕にはどうもしっくりこない。そのため,版画は昔ながらの黒と赤にした。

スエズ運河を航行する巨大コンテナ船


ところで,版画のコンテナ船に積まれたコンテナの色は6色だが,実際には赤,黄,青の3色しか使っていない。つまり,赤と黄色が重なりオレンジ色,青と黄色が重なり緑色,赤と青が重なり紫色が出現する。そういうわけで版画の作成は,思ったよりも面倒ではなかった。残念なのは船の動きがうまく出せなかったことだ。後ろに続く船の舳先でそれを表そうとしたのだが。


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