今日は,木目の上手な出し方を教えてもらうべく,アトリエ・プンタスに本田先生を訪ねた。いつもは車で行くのだが,今日は週末で街の駐車場も混んでいると思い,久しぶりにバスに乗って三ノ宮に向かった。ルーチン(routine)で無いことをすると思わぬことも付随して起こるものだ。
久しぶりにバスを降りると,かつては高架下にあった西側へ道路を渡る信号機付きの横断歩道が随分北側に移動している。青信号が赤に変わらないうちに渡ろうと思い,歩道を横断歩道にむかって走り出した。
左にカーブして横断報道を渡ろうとしたとき,背中に背負っていた,ベアリングバレン,画材,紙などがいっぱい詰まった大きなリュックサックがずれてバランスを失い,派手に転んでしまった。まさに「すってんころりん」か,はたまた「ステンカラージンの乱」か。ちょうどノーサイド寸前にサイドラインギリギリのスペースにトライするような感じで転倒。体を庇うために地面についた手は皮が剥けて血が出てるし,何よりも手首が痛い。
多くの人が「大丈夫ですか〜?」と駆け寄ってきたことがなんか恥ずかしくて,格好悪くて。もちろん「大丈夫です」とその場を離れ,ドラッグストアで大きめのバンドエイドを購入して応急処置をして,アトリエ・プンタスへ向かった。
手が痛むので,プンタスではあまり十分に版画に専念することはできなかったが,「木目の出し方」のコツは十分理解して,満足して帰路についた。手の痛みは少しずつ増すが辛抱できないほどではない。おそらく骨折はしていないんだろう。痛みよりも「格好悪いなあ」,「恥ずかしいなあ」という思いが強い。そして何よりも自分が自分の体のバランスもとれない,正真正銘の「老人」なんだと情けなくなった。
そんなことを思いながら街を歩いていると,いつものお店のショーウインドウの額が「風船葛(ふうせんかずら)」の木版画に変っている。なんかとってもハッピーな気持ちになった。
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葉月の版画:風船葛が,,, |
風船葛の木版画が飾ってあることになんかとっても心が和み,横断歩道で転んで「恥ずかしかったこと」,「格好悪かったこと」も,こんなに多くの人たちが転んだ僕を心配して駆け寄ってくれて「皆こんなに善きサマリア人のような人ばかりなんだ」とポジティブに考えることができるようになった。そして,手の痛みはあるが,これも大事故になるまえに,「もう若い時と同じではないんだから,慌てて走ったりせずゆっくり行動しなさい」という警告なんだとも前向きに考えだした。
来週の金曜日は,県立美術館の木版画教室の最終日,今季の課題のもと作成した木版画の講評会だ。講評会用に「裏六甲の四季」と「なんとなくパリスの四季」をいつもお世話になっている額装屋さんで綺麗に額装してもらった。家に帰ると脹ら脛や,太ももの外側も随分擦りむいているし,手首の痛みも増してきたが,辛抱できないほどではない。まあ今日も「良い日だった」と思うことにしよう。