2020年11月21日土曜日

小雪

明日11月22日は小雪。北海道などの北国では雪が降り始める頃だし,高い山の山頂付近では既に雪が積もっているが,まだまだ街中では雪を見ることはない。

40年前の4月,R大学に助手として採用され,僕の研究者人生は京都で始まった。赴任当日の夜,まだ電話も設置されていないガランとしたアパートに,母から「父危篤」との電報が届き,教授会での最初の挨拶は父の葬儀への供花,弔電の御礼という少し辛い研究者人生のスタートだった。

住んだのは河原町今出川という出町柳駅に近い街中のアパート。それは中原中也が長谷川泰子と住んだ部屋からほど近く,紫式部が『源氏物語』を著した廬山寺のすぐそばだった。二年間衣笠のキャンパスまで毎日通った。

通勤途中,バスの窓から見える全てが,それまで住んでいた町の見慣れた風景とはまったく異なり,日々発見の毎日だったが,父の死後間も無く,心の底から,それを楽しめる状況ではなかった。


耐えられないほど暑い京都の夏が過ぎ,新しい生活のペースができ新しい研究も始めた。R大での同僚たち(すべて年上の先輩だったが)と京都の生活も少し楽しめるようになった。冬になり夕方,小雪の中,托鉢僧が長い行列を作って歩いている,まさに京都らしい光景を目にすることが何度かあった。どこの寺の僧かはわからなかったが,勝手に比叡山から托鉢のため下山してきたのだと想像していた。

楽しかった記憶もあるし,「汚れちまった悲しみに今日も小雪の降りかかる....」(中原中也)という思い出もある。しかし,あの2年間が僕の研究者人生の原点だ。

当時下宿が近く,R大の同僚だったMさんに近々会いに行くつもりだ。





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