昨年,木版画のカレンダーを共同で作成する機会があった。もちろん僕は初めての経験だが他の方はすべて経験豊富な方だから,カレンダーにはどのような版画がマッチするかを心得ておられるのか,どれも素晴らしい木版画で,僕の簡単な花火の版画はすっかり見劣りしてしまった。
今年は,一人で作成してみようと思い立ち,どうせなら数字の部分も木版画で作成しようと考えた。これで正真正銘の手作りカレンダーになる。毎月に対応した12種類のカレンダーを作れば良いのだが,それなら別の年は使えない。あと5年ぐらいは生きたいと思っているから,これから毎年使うことができるような木版画を考えることにした。もっとも単純な方法は,【1】から【31】までの数字を31個の小さな木片に彫り,それを毎月並べ換える方法である。しかし,カレンダーの数字の規則性を考えると,そんなに多くの木片は必要ない。つまり,
- カレンダーには日曜から月曜まで7列あるが,その数字を各列に沿って縦にみると,それらは初項がそれぞれ【1】から【7】までで,公差が7の等差数列になっている。つまり,たとえば【1】の列では【1】の下は7を加えた【8】,その下はさらに7を加えて【15】,その下は【22】,その下は【29】と5個の数字が縦に並ぶ。同様に【2】の列は【9】【16】【23】【30】と5個の数字が縦に並ぶ。
- 【3】の列も同様に【3】から【31】まで5個の数字が並ぶが,【4】【5】【6】【7】で始まる列については,大の月でも一月は31日までしかないため,それぞれ【25】【26】【27】【28】で終わる4個の数字が並ぶだけである。
- ところが,2月は通常28日であり,4年に一度の閏年でも29日しかない。したがって【1】【2】【3】で始まる列では【29】【30】【31】がない場合もある。つまり万能にするためには,それらを切り離し,それぞれ4つ数字の並ぶ縦の木片を7種類と【29】【30】【31】の3個,合計10個の木片を作れば,それらを組み合わせるとあらゆる場合に対応可能。木片の数は31個に比べて三分の一以下に減少する。
- しかしここで問題が発生する。日曜日スタートのカレンダーでは,大の月が,金曜日や土曜日から始まる場合,数字が縦に6個並ぶのである。つまり,通常数字の配列は5行7列だが(2月は4行7列になる場合もある),その月の数字の配列は6行7列となる。事実2021年では1月,5月,10月がそうである。
- このことは上の方法で十分対応できるのだが,紙面の節約のため,【23/30】【24/31】という2個の木片を追加し,すべての月の配列を5行7列に統一した。それに応じて【2】と【3】で始まる列から【23】と【24】を切り離し,合計12個の木片となる。それでも31個の木片に比べるとかなり減少し手間が省ける。
必要な11個の木片(一番上は曜日) |
刷りあがり |
これなら宇宙が続く限り,あらゆる年のカレンダーに対応している。しかし,刷ってみると大きな問題が発生した。つまり日曜や祝日は赤い色の数字にしなければならないが,一度黒を使ってしまうとなかなかその色が抜けないのである。もう1セット赤色用の同じ12個の木片を彫り,二回刷るという方法もあるが,,,。何か良い方法はないものだろうか?来年のカレンダーを作成するまでには十分な時間がある。これをプロトタイプとして,字の大きさや,書体も含めて,これからいろいろ考えるのも楽しみだ。