2021年3月7日日曜日

A place I have never been (I): Antarctica

『職業としての学問』(マックス・ウェーバー著,尾高邦雄訳,岩波文庫)に書かれているような難解で哲学的な議論は横に置いておいて(実はそこに書かれていることは,僕の大学観におおいに影響を与えているのだが),僕は,曲がりなりにも学問を職業とすること39年,定年退職に際して「一体自分は何をしたかったんだろう,そして一体何をし得たのだろう」と考えた。自分なりに,そして自己満足に過ぎないかもわからないが,明らかにできたことはいくつかある。しかしそれらはすべて,極めて限定的な状況の中でだけ言えることであって,社会経済全体を普遍的に考察するには,あまりにも小さくて無力だったように思う。 

 大学院時代から継続して指導を受けたS教授と同じように国際的な仕事をしなければならないという強迫観念からか,僕は自分の非力を顧みず論文は国際的な場で報告することを基本的な姿勢にしてきた。海外の研究者との共同研究,学会や研究集会への参加などで何度も海外へ行ったが,この一見「国際的」な姿勢も,研究内容と同じで実は極めて限定的なものだ。地球には,6つの大陸がある。ユーラシア大陸,アフリカ大陸,北米大陸,南米大陸,オーストラリア大陸,そして南極大陸である。つまり,僕の行った大陸は,このうちユーラシア大陸と北米大陸の二つだけなのである。 

 もちろんすべて仕事で訪問しているのであって観光ではないのだから,当然なんだが,行きたかったが行けなかったところもたくさんある。その中には行こうと思えば行けたかもわからないが,行こうと思っても行けなかったところもたくさんある。まさに南極大陸がそれである。もし行けたら,「到着前はさぞ感動するだろう」との妄想で,南極の氷海を進む接岸直前の砕氷船「しらせ」を木版画にした。実際に行ったことがないのだから,このような景色があるのかどうかはわからない。でも,なんとなくこんな感じかもわからない。




(注記)北米大陸と南米大陸,ユーラシア大陸とアフリカ大陸はそれぞれ繋がっているように地図では見えるが,実は前者はパナマ運河,後者はスエズ運河で分離している。

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