2022年10月26日水曜日

僕の「奥の細道」(III)2022年10月26日

1日目は554km,2日目は552kmという強行日程だったが,昨日は234kmという適度の距離の移動,それも鍋越峠を越える山道のワインディングロードや素朴な家並みの中の母袋街道などの楽しいドライブだったから一息つけた気がする。さらに天童市で宿泊した旅館は素晴らしく居心地がよく,つかれがすっかり取れた気がする。夜は10割そばと天ぷらをいただき生き返った心地。

早朝温泉につかり,美味しい朝食のバッフェ(僕はホテルの良し悪しは朝食で決まると考えている。I日を気持ちよくスタートするためには何と言っても美味しい朝食だ)の後,山寺の立石寺に向かった。山寺に到着したのは8時30分。麓の駐車場にはまだ人影もない。よく見ると「管理人がいない時は,このメモに自動車のナンバーを記入し500円を包んでポストに入れてください」との掲示がある。

立石寺の山門に着いたが人影はまったくない。入り口で入場券を購入したときに聞くとそれでも既に二、三人のひとが入山したとのこと。ここからてっぺんの五大堂まで1000段以上の階段を登らなければならない。人は誰一人いない静寂の中,ゆっくりゆっくり登り始めた。

折れ曲がりながら続く階段

中程より少し手前か,「せみ塚」に到着。芭蕉の句碑がある。

閑かさや
岩にしみ入る
蝉の聲

  芭蕉

句碑:芭蕉はここで俳句を詠んだという。ほんとうかなあ?

閑かさや
聲なき塚の
秋の寺

   一郎

かなり上まで登ってきた。ふと振り返ると人影が。ゆっくりゆっくり登ってきたからだんだん後続に追いつかれてきたようだ。しかし振り返った景色をみると生き返るようだ。

振り返ると人影が

前を見ると,紅葉した木の向こうに納経堂。五大堂はもう少しだ。五大堂に到着するとそこには既に5人ほどの人がいた。五大堂からの素晴らしい眺望は,長い階段の疲れも吹き飛ばす。ガイドブックには立石寺の見学には階段の往復を含めて3時間は必要とあったが,思ったほどきつい坂道ではなく,片道30分をみておけば十分だ。帰り道,かなり年配の人たちが登ってこられているのと出会った。

紅葉の納経堂

五大堂からの眺望

紅葉の
山寺降りて
膝笑う

 一郎

 予定より早く階段を降りてくることができた。十分時間があるので,午後に予定している最上川船下りも一本早い船に乗船できそうだ。余裕を持たせた計画なので,ひとまず天童市内に戻り,昨日スキップした「天童将棋資料館」を覗くことにした。さまざまな将棋の駒が展示されていてとても楽しい。さまざまな将棋グッズが売られていたが,ここでもやはり主役は藤井聡太。

午後の予定は最上川船下り。予定より早く到着したので一つ早い船に乗ることができた。乗船場で軽く昼食をとって出港を待つ。思ったより人が多いのと,コロナ禍で席の間隔を十分にとるためか,船は二隻に分けて出港した。隣に座った長岡から来たという年配のご夫婦が親切にもお饅頭をひとつ下さった。僕がよほど貧乏に見えたのだろうか?

たいそうな時代錯誤の乗船場

紅葉の時期には少し早かったようだが,快晴,雨の気配もない穏やかな天候と川の流れで快適な船下りを楽しむことができた。

五月雨を
あつめて早し
最上川

  芭蕉
海の船は船底が三角形に尖っているが,川の船は浅瀬が多いため平面になっている。そのため波があたると底からドン,ドンという音が聞こえる。そういえば文楽では川の流れをドン,ドンという太鼓の音で表していたことを思い出した。

静かに流れよ最上川

秋晴れに
あつめる雨なし
最上川
船下り
ところまだらの
紅葉かな
 一郎
船下りの難点は,フェリーではないから自動車を乗せることができないことだ。ロードスターは乗船する古口港の駐車場に停めておかなければならない。一時間足らずの船下りのあと下船した草薙港からバスで古口港まで戻る必要がある。バスの窓から戻る船が見える。小さな船だ。かの「おしん」はやはりこの最上川を下って酒田へ奉公に出た。

最上川を戻る船

今日の予定は完遂。あとは宿泊地鶴岡まで30キロほど。のんびり一般道を走っていると,「出羽三山神社は左折」という標識が出てきた。意外に近く日もまだ高いので寄ってみることにした。月山神社,湯殿山神社,出羽神社を一堂に集めた何とも便利なところだ。事実月山の頂上にある月山神社にはこの時期行くことはできないし,湯殿山神社への道も11月上旬に閉鎖されるとのこと。神社は屋根の補修工事中で少し興醒めだったが,ここにも芭蕉の句碑があった。

数々の名所旧跡,川下りなどはもちろん素晴らしいが,何よりも幌を全開したロードスターの運転中に眼前に広がる庄内平野や月山などの山形の風景が素晴らしい。昨日の母袋街道,鍋越峠を含めて,今回の一人旅で最も楽しめたのが,車窓からの風景だ。運転中,撮影できないためそれをお見せすることができないのは残念だが,やはり実際に山道,田舎道を車で走らなければそれを感じることはできない。そしてこの爽快感は,オートマの高級車では絶対得られない。今日の走行距離はたった137キロ。立石寺の階段,最上川船下りなど盛りだくさんだったが,ちょっとした休息ができた。

山形道
頭上を過ぎる
秋の風 
幌開き
庄内平野
秋の空

  一郎

羽黒山大鳥居の近くから月山を望む










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